アンダーカバー 秘録・公安調査庁 麻生 幾
警察小説では、いつも下に見られる公安調査庁、
今作では公安調査庁が舞台です。
主人公の芳野綾は最年少で本庁の分析官に抜擢され
た天才、彼女のもとに届く膨大な情報、全く関係な
いと思われる情報でも何かを感じれば未裁のボック
スに、そうして繋がる重大な事実、情報分析という
仕事の重要性、警察の公安と比べ一段下に見られる
組織の底力が描かれています。
しかし、情報の世界で働く人間は、真の人間関係、
それは夫婦だったり恋人だったり、自分の感性、直
感で衝動的に結びつくなんてことは許されない、そ
こには必ず裏がある、そのうち裏と表が分からなく
なる、皆そうなってしまうのでしょうか。
尖閣諸島に向け武装した中国の漁船が一斉出航する
情報を得てからの綾の忙しさは半端なく、仕事をし
ながら気絶するように寝て、そのまま起きる、そん
な状況で関連する様々な情報を入手、分析し、尖閣
諸島を中国側が実効支配することが現実味を帯びて
きます。
どうすれば止められるのか、政府内の情報漏洩や、
自衛隊の早すぎる行動、様々な思惑、嫉妬、工作行
為、目まぐるしく変わる状況に読み手も必死です。
読み始めたら止められない、とても面白い作品でし
た。そして公安調査庁という組織の中身が覗けた気
がします。
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