メビウス・ファクトリー 三崎 亜記
工場が町の産業のほとんどを占め、住民は工場に勤
めるか関連施設へ、工場が町そのものである完全閉
鎖型企業城下町を舞台にした物語です。
町の中で生活の全てが完結する社会、お金も独自の
電子マネーで統一され、交通機関も巡回バスが町を
くまなく廻り車さへ必要としない、そんな場所で起
きる様々な出来事、町民はどう判断するのか、とて
も恐ろしい物語です。
工場で製造されているのはP1と称されるもの、匠
の技ではなく、心を込めて作ることが最重要、奉仕
という言葉が求められる閉鎖的な世界で生活する人
々、平時は命ぜられたことをこなせば何不自由なく
暮らせるという、未来とか切り開くと言った言葉が
無用な町に小さな綻びが生じます。
それは町出身の男、アルトが妻とその連れ子ととも
にUターン就職したことから始まります。
社会主義とか共産主義、宗教的な感じもしますが、
こういったことが理想なのでしょうか。
そんな町で生活をするとどうなるのか、人間はその
生活に慣れ、やがてそれが当然と思うようになって
いきます。
それでも、平和な時は、その生活の中で幸せを感じ
たり悩みを抱えたりします。
当たり前が、そうでなくなった時、人は何を考える
のか、どう行動するのか、とても恐ろしいです。
町は崩壊へ向かうのか、それとも存続するのか、ど
こかの行く末を見るような気がする物語でした。
[0回]
PR