黒い紙 堂場 瞬一
堂場瞬一氏が企業小説?と思ったら、内容は警察小
説的ミステリーでした。
交番勤務に誇りを持って勤務に臨んでいた父親が殺
されたショックで自身も神奈川県警の刑事を辞め、
彼女と別れた主人公の長須は警察OBが始めた危機
管理会社TCRに拾われ、最初に担当した事案が、
顧問契約を結ぶ大手総合商社テイゲンに届いた会長
の糸山が働いた旧ソ連のスパイ活動をネタに現金
10億円を要求するものでした。
テイゲンからは、警察に知らせず秘密裏に処理する
ことを要求されます。
長須は立ち直り事件を解決することができるのか、
警察組織に属さないことが調査にどれほど支障があ
るのかにも気づくことになります。
不自由を強いられる中で、少しずつ解決へ向けて必
死にもがく長須の姿を描いています。
ショックで精神的に病んだことを差し引いても少し
変わった性格の長須、それが自身が持つ正義感のせ
いなのか、元来の性格なのか何とも言えませんが付
き合いにくいことは確かです。
それでもTCRの同僚や警察時代の同期が何かと彼
を気に掛けてくれる、絆のようなものを感じます。
警察小説のように強引な捜査方法で前に進んでいく
のではなく、民間会社が事件解決へ危険にさらされ
ながら半歩遅れで進んでいく物語もなかなか面白い
なと思いました。
異色なミステリーですが面白かったです。
[0回]
PR