マルチナ、永遠のAI。――AIと仮想通貨時代をどう生きるか 大村 あつし
静岡県富士市在住の著者が地元を舞台にAIと仮想
通貨を題材に描いた経済とITの小説です。
大手IT企業エッテル・マークソンの社員、五条堀裕
樹が開発したAI「マルチナ」が大型スーパー「デル
ポトロ」のフードコートに客を取られ債務超過状態
のキッチンいわしなや再建を担います。
キッチンいわしなやの息子、岩科正真は東京で公認
会計士を目指して勉強中、そんな正真のもとに実家
から一度戻ってくるよう連絡があります。
正真が見たキッチンいわしなやの現状は散々たる状
態で、同級生の五条堀裕樹が開発したAI「マルチナ」
に再建を託すことになります。
AIで定食屋が再建?と違和感ありますが、マルチナ
に会った正真は考えを改めます。
それはマルチナが美人であったこと、そして恋をし
てしまうことでした。幼なじみの沙羅に惹かれなが
らもマルチナに引き寄せられていく正真、奇妙な恋
の行方も気にな
るところですが、肝腎のキッチンいわしなやの再建、
五条堀の勤務するエッテル・マークソン、そしてフ
ジヤマ市の行方に不穏なものを感じていきます。
舞台となるフジヤマ市はAI特区に指定されており、
AIに関して様々な規制が緩和されており将来はAI議
員もなんて話しも出るくらい進んでいました。
AIについて、イラストも交え詳しく解説されていて、
とても勉強になります。
2020年のオリンピックを終えた後の近未来を舞台に
しておりリアリティーが増します。
AIの進化は、「士業失業」となるのか。懸念される
社会問題をも踏まえ展開していくストーリーは読み
手を飽きさせず、ラストはやっぱりという残念な気
持ちもありますが、それ以上の結末が待っていてと
ても面白かったです。
[1回]