風は西から 村山 由佳
2013年、奥田民生の25枚目シングルの「風は西か
ら」と同名のタイトル、彼と同じ広島出身の藤井健介
が自殺をした。
自殺した原因、真相究明のため、健介の恋人だった
伊東千秋と彼の両親が3年以上の年月を掛けて戦っ
た記録です。
もはや過労自死、ブラック企業の代名詞となってし
まった、あの居酒屋チェーンをモデルに描かれたも
のです。
著者の村山由佳氏らしい恋愛小説特有のあの重さ
「情」という心の動きが目一杯注ぎ込まれています。
大学からの付き合いである、健介と千秋はそれぞ
れ「食」に関する企業へ就職します。
健介は大手居酒屋チェーン「山背」の創業者の言
葉に心酔し最終面接でも、そのことを強く訴え採
用されます。
社長を心酔したからこそ、そして健介の真っ直ぐ
な性格が災いし命を落とすことになります。
それは、多忙でなかなか会えなくなった千秋にも
健介のおかれた状況が分かるほどでした。
一方の千秋は、大手食品メーカー「銀のさじ」に
就職、「山背」は得意先でもありました。
過酷な労働環境で労災の認定も受けたますが、労
災の認定まで千秋達の困難を極めた資料収集、そ
の後も全く誠意のかけらもない「山背」の対応や
外部への圧力、真相究明と社長の謝罪をめざし、
大企業を相手に様々な「壁」を乗り越えようとす
る千秋達の姿は忍耐という言葉では足りないよう
な地道なものでした。
読み応えのある、人間の強さをとても感じるとて
も面白い作品でした。
しかし、このストーリーは著者らしさを十分に
感じられる作品でもありました。
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