社長室の冬 堂場 瞬一
歴史と伝統のある新聞社、日本新報の記者で主人公
の南康祐は、自身が甲府支局でとばした誤報のせい
で、なぜか社長室に異動となり社長の小間使的な役
割をする毎日でした。ところが、自分の目の前で社
長の小寺が倒れ亡くなります。後任には南とも因縁
のある新里が就任し、命じられたのは外資系の
メディア企業、ネットでニュースを売りアメリカで
急激に成長しているAMCへの身売り交渉の一員と
なることでした。
前社長から申し込んだという身売り、それほどまで
に日本新報は経営危機に至っていたのでした。社内
全体が揺れる中、同期の退職、社長室にいるだけで
疎まれる、南は方々からの厳しい視線や反対派から
の工作、ライバル社からの誘い、それは身売りを申
し込んでいるAMCからもありました。
記者時代とは全く異なる環境、そもそも小間使、
メッセンジャーの役割しかないことに南の心は荒ん
でいきます。それでも、何かを見つけ出す、流れに
抗いながら未来を見つけ出す、生き方を描いていま
す。
労働組合、政治家、創業家との交渉そして戦い、
日本式の会社、とりわけ新聞社という文化がどれほ
ど旧態依然としたものなのかを鋭く突いています。
とても面白い作品でした。
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