Tの衝撃 安生正
日本国民の安全、日本国そのものの安全よりも組織
防衛、組織の拡大しか考えられない人間がこれほど
いたとは、と思いきやその歴史はとんでもなく古く、
真相に唖然とする衝撃の作品でした。
岐阜県、長野県の地理を理解していると話の流れは
掴みやすいと思いました。個人的に昔住んでいたり、
いろいろと縁があった地域が物語の発端になりラス
トの重要な場所になっており国道の名称を見て懐か
しく思いました。
長野県と群馬県の県境の山中で最新鋭の輸送車で輸
送されていた核燃料が強奪、それもあり得ないよう
な圧倒的な戦力で、本当に日本で起こったのか、同
時刻に起こった岐阜県の山中で起きた土石流で東亜
大学の教授らが乗った乗用車が流されます、理学部
付属地震研究所の坂上教授は行方不明、助教の竹内
令子は遺体となって発見、令子の恋人で准教授の
八神憲章は奇跡的に助かります。
一体何が起きたのか、秘密裏にしかも陸上幕僚監部
内だけで襲撃犯の特定、尋問、奪還を行おうとする、
その無茶な命を受けたのが運用支援・情報部の三等
陸佐、主人公の溝口貴弘でした。溝口は部下の三桶
一等陸尉と君島三等陸尉のたった3人で法を犯して
情報をかき集めていきます。
誰が敵で誰が味方なのか、どの国が敵でどの国が味
方なのか、関係とはこんなに脆いものなのかと感じ
ました。
「正義」という言葉が陳腐に聞こえる、死んではい
けない人が死に、死なずにすむはずの人も死ぬ、
様々な人の判断が日本を危険に晒す、とんでもない
展開に読み進めるしかないという思いを感じる作品
です。
複雑な展開と想像を超えた真相、リアルなだけに衝
撃を受けます。
もしかしたら本当に日本で起こっているかもしれな
い出来事、そう感じてしまう、とても面白い作品で
した。
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