疑獄 小説・帝人事件 波多野 聖
戦前の1934年に起こった大疑獄事件を題材に
した作品です。もちろん実名で当時の事件を
リアルに再現しています。
帝人事件は、帝人株を巡る贈収賄事件のことで、
財界人、官僚、閣僚の合わせて16人が起訴、
予審喚問では185人、公判では140人もの
証人が証言を行い、結果は無罪。
様々な立場の人間の思惑により故意に起こされた
でっち上げの国策による事件と呼ばれているもの
で、私は、この作品で事件の内容を知りました。
河合良成という人物が中心に描かれています。
農商務省から東京株式取引所、郷誠之助との出会い
番町会での活躍、企業と企業の合併を仲介し、
その後帝人事件に巻き込まれていく様子が時代
背景を含め本当に戦前の日本なのかという感じが
します。
経済小説としてもとても面白く、
勉強になりました。
こういった事件はいつの時代にもあり、正義
のはずの検察も何かの強い意志が働くととんでも
ない国策捜査が行われるのだなと思いました。
日本の経済史を学ぶうえでも、
とてもいい作品でした。
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