法服の王国――小説裁判官(上) 黒木 亮
法服の王国――小説裁判官(下) 黒木 亮
昭和から平成に、世の中が変わっていく中で
裁判所という世界も徐々にですが変化がありました。
主人公の津崎守は、順調に出世していきます。
父親が犯罪者でも法曹界で出世できるのだなぁと
驚きました。
この小説では、裁判所、裁判官という世界のことと
著者がその時経験した福島第一原発の事故を
目の当たりにして、原発と裁判所の関係を中心に
描かれています。
電力会社や国が原告の原発の安全性についての
証明の要求に対し何となくという言葉がしっくり
くるのらりくらりの説明を追認する裁判所。
裁判官の中には村木健吾のように中立で、両者の
証言をよく聞き正しく裁く、しかし彼に迫るプレ
ッシャーは凄まじいものがありました。
心を同じくした同僚の自殺も経験します。
結局、裁判に深く関わる程、原発の危険性につい
て知り得る事になり、電力会社や国の説明や主張
をどれだけ聞いても恐怖しか生まれない、村木は
素直に感じていました。
そして事故が発生します。
爆発と政府からの発表。
三権分立、日本国憲法に定められた原則、裁判所
が戦後本当に守ってこれたのか。時代の要請に応
える事でそれを犯していないのでしょうか。
自分の知らない世界と原発について、とても考え
させられる作品でした。
とても面白かったです。
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