国家とハイエナ 黒木 亮
久しぶりの経済小説ですが、これは小説というより
ノンフィクションのような感じです。
2000年の九州・沖縄サミットあたりからの物語とい
うか金融界ではこんな出来事がありましたというお
話です。
昨年7月に亡くなった国際問題評論家で最貧国の債務
帳消しキャンペーンなどのNGOでも活躍された
北沢洋子さんについても触れられています。
破綻状態の国の債権を格安で購入し、先進国の法定で
その国を相手に債務を支払うよう訴訟を行い、現物、
物語ではタンカーや航空機を差し押さえ巨額の利益を
得るいわゆるハイエナ・ファンドの存在と、そのファ
ンド、国、NGOの闘いを描いた作品です。
こんな無茶苦茶、しかし違法ではない強引な手法が
存在し、それが実際に行われ、結果、破綻した国の
国民は更に貧しくなる負のサイクルが続いていること
を、この本を読むまで知りませんでした。
様々な国が様々な目的で救済のために拠出した援助も、
彼らファンド存在がある限り目的を達成するどころか、
このファンドへ投資した者の利にしかならない現実に
驚きました。ある意味、日本も債務返済のために多く
の予算を投入している現実があります。
作品では、トランプ氏が大統領候補に名乗り出たとこ
ろくらいまでで終わっていますが、読み応え十分とい
うか、相当難しい作品です。
金融の仕組みや専門用語、当時の社会情勢を巻末にあ
る用語集などを参考に読み進めないと肝心の内容が
理解できずに読み終えてしまいます。
久々に紙の本を、それもかなり厚い作品を、覚悟のう
えで読みましたが、本当に頭を使う作品でした。
それでも、とても勉強になりました。
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